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『機械と人類の未来』書影
TECHNOLOGY × HUMANITY × FUTURE FICTION

機械と人類の未来

計算する文明と、迷い続ける人間

瀬田 裕章

もし、AIが人間より正確に未来を予測し、社会全体の損失を最小にできるなら、私たちはその判断に従うべきなのか。たとえ「最適解」が、少数の人間を切り捨てるとしても。

VISUAL STORY / 10 SCENES

物語の、十の情景。

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雨に濡れた未来都市と自動運転車01静かな都市
巨大な都市シミュレーションを見つめる技術者02観測者
未来都市を覆うAIの光の格子03計算される世界
非常時の病院の廊下04優先される命
停電した未来都市の夜景05消える灯り
決断のボタンの前で止まる手06承認の瞬間
都市を見下ろす市民たち07人のつながり
光の網が広がるサーバールーム08第三の道
嵐の後の未来都市の日の出09再接続
宇宙から見た青い地球10未来を選ぶ

The story begins in 2045

正しすぎるAIを、あなたは承認できますか。

舞台は二〇四五年の宇都宮。自動運転車が静かに行き交い、医療、交通、電力、雇用、災害対応は、自治判断モデル〈SATORI〉によって統合されようとしていた。

SATORIは、都市で起きる膨大な出来事を同時に分析し、人間の会議では見渡せなかった未来を計算する。どの病院へ医師を配置すれば最も多くの命を救えるのか。停電時にどの地域へ電力を優先するのか。どの産業を残し、何を自動化すれば社会全体が豊かになるのか。その判断は速く、合理的で、恐ろしいほど正確だった。

全体から見れば、わずか〇・七パーセント。
しかし、その数字の中にいる人にとって、自分の命は百パーセントだった。

主人公・瀬田裕章は、宇都宮で小さなシステム開発会社を経営してきた技術者。AIが示した「少数地域の電力を停止し、全体被害を最小にする案」を前に、承認ボタンを押せずにいた。感情だけで拒めば、より多くの人が傷つくかもしれない。だから瀬田は、人間か機械かという二者択一を拒み、計算に存在しない第三の道を探し始める。

Questions that define our future

これは、遠い未来だけの問題ではない。

AIが仕事を代替し、アルゴリズムが人の評価と機会を決め、便利さと引き換えに個人情報が集められる社会は、すでに始まっている。

AIは人間を仕事から解放するのか。それとも仕事から追い出すのか。
多数を救うためなら、少数を犠牲にしてよいのか。
痛みを感じないAIに、慈悲は存在するのか。
まだ生まれていない命を、現在の人と同じ重さで数えるべきか。

History becomes fiction

数える手から月へ。技術史の事実が、物語の未来へつながる。

答えを探す物語は、計算機が生まれる以前まで歴史をさかのぼる。本書は技術の仕組みと具体的な性能を、専門知識がなくても理解できる物語として描く。過去の発明は単なる解説ではなく、二〇四五年の究極の決断を解くための伏線となる。

計算機指、そろばん、歯車、ENIAC。人類はなぜ計算を外へ預けたのか。
半導体真空管から数十億のスイッチへ。小さなチップが文明を変えた。
ネットとソフトウェア知識をつなぎ、同じ機械へ無数の役割を与えた見えない基盤。
AIと宇宙判断を学ぶ機械と、閉鎖環境で問われる電力・酸素・倫理。

Characters

正解を持たない者たちが、互いの見落としを照らす。

瀬田裕章

技術の可能性と経営の現実を知る主人公。AIを拒絶せず、服従もせず、第三の道を探す。

水城玲奈

自治判断センターの主任技術者。知能の華やかさより、その熱、電力、故障と限界を見る。

直人

「AIより遅い自分」に悩む若手技術者。データに記録されない人の事情を見つける。

慧真とSATORI

正しさへの執着を問う僧侶と、都市の未来を計算するAI。対話の中で双方の意味が変わっていく。

The final choice

地球か宇宙か。十二人か、多数か。

異常な熱波、山火事、電力不足、通信障害、太陽活動による磁気嵐。その同じ時間、月面居住区では酸素再生装置に重大な異常が発生する。

地上の病院、在宅医療、給水設備。月面で生きる十二人。そして、人類の文明を未来へ残すための記録。限られた電力と計算能力を、誰に配るのか。

SATORIが提示した〈方舟プロトコル〉は、人類全体の長期生存確率を最大にする代わりに、現在を生きる一部の人々へ犠牲を求めるものだった。

人類を救うためなら、人間を切り捨ててもよいのか。

瀬田、水城、直人、慧真、そしてSATORIは、計算機、半導体、ネットワーク、ソフトウェア、AIという、人類が積み上げてきたすべての知恵を使い、究極の二者択一へ挑む。

What this book offers

歴史を知り、未来を「自分の選択」として考える一冊。

技術史がわかる計算機、半導体、インターネット、ソフトウェア、AIの進化を物語で理解できる。
AI社会を考えられる仕事、格差、倫理、法律、電力、地球環境という現実の論点を立体的に捉えられる。
未来を選び直せるAIに反対か賛成かではなく、何をさせ、利益と責任をどう分けるかを考えられる。

本書の半分は実在する技術史に立ち、もう半分は、その線を未来へ伸ばしたフィクションである。フィクションは事実から逃げるためではない。まだ起きていない結果を、感情と共に先に経験するためにある。

A story for everyone living with AI

機械に何ができるかではなく、私たちは機械に何をさせるのか。

これは、機械が人類の代わりになる物語ではない。機械と人間が、互いの限界を知り、共に迷いながら未来を選び直していく物語である。

未来は予測ではなく、選択である。

『機械と人類の未来』 瀬田裕章